松久淳 猫なんて飼うんじゃなかった

<目次>
00「ご案内」
01「猫が来る」
02「猫はタフでなければ生きていけない」
03「猫を飼う奴なんて」
04「猫は気にしない」
05「長生きの秘訣」
06「猫の小説デビュー」
07「吠える猫」
08「猫をかぶっていないときがある」
09「猫の帰還」
10「猫の飼い方」
11「好奇心に猫は落ちる」
12「マーロウ救出作戦」
13「YouTubeデビュー」
14「ミリオンを達成する猫」
15「猫の話をそのうちに」
16「老い始めた猫」
17「ボケていた」
18「もういっかいマーロウ」
19「猫はただの猫」
20「化け猫疑惑」
21「赤ちゃん返り」
22「世界でいちばん好きな猫」
23「猫なんて飼うんじゃなかった」
10「猫の飼い方」
そういえばマーロウがやってくる前には1冊ほどガイドブック的なものを読んだけで、その後はいわゆる「猫の本」を手にしたことがなかった。いまさらなが
ら、自分の猫の育て方が間違っていたんではないかと思わなくもない。三つほど私の、「これって正しい飼い方だったの?」を披露してみよう。
一つ目。たぶん10年以上、マーロウを洗っていない。
最初の数年は、風呂場のドアをしっかりしめ、逃げ回り大暴れするマーロウをなんとか抑えて、猫用シャンプーをふりかけて手洗い、シャワーをかけてすす
ぎ、タオルを何枚も使って脱水、ドライヤーなど音だけで近づきもしないのであとは自然乾燥と、まあウール洗いとほぼ同じ手順を踏んでいた。
でもあるとき、猫は自分で毛繕いするのだから、家猫にシャワーは必要ないと何かで聞いた。え、そうなの? としばらくシャワーの期間を開けてみようかと思っているうちに、あっというまに10年以上。
確かに、全然汚れてないし、匂いもない。ただ、本当に正しい処置か否かは責任を持たないので各自確認されたい。
二つ目。たぶん10年以上、後ろ足の爪をたまにしか切っていない。
これもずっと苦行だった。伸びてきた爪を切るために、よっこらしょっと抱っこする。すかさず、私の腕をがぶっと噛むマーロウ。触られることすら嫌いなの
に、抱っこでロックされて、足を掴まれて、肉球をぷにっと押して爪を飛び出させるなんて、そうそう簡単に許すような猫ではないのだ。
だが、切らなければますます私への攻撃力が高まってしまう。次第に、抱っこのできる間隔、彼のなるべくいやがらないポーズ、迅速な爪切りなどを私のほう
が習得していった。こういうのを、「飼い慣らされる」というのだろう。飼い主のほうが、よっぽどいろんなことで飼い慣らされてると思う。
でも、前足が終わり、後ろ足を掴もうとすると、その屈辱的なポーズが許せないのか、私の腕や足を「がぶっ」。こちらも諦めて後ろ足の爪切りの頻度は減っていった。
そしてあるとき気づいた。(これも各自必ずご確認をだが)10歳以上の老人になってから、前足を切ったついでに後ろ足もチェックすると、「伸び率」が遅いのだ。というか、気にならない程度のところで止まっている。
ありがとうマーロウ、お互いに嫌なことをしないで済むようにしてくれて。
三つ目。マーロウの世話で、たぶんとりわけどの猫よりも大変なのは「毛」だ。これは赤ちゃんのときから大老人に至るいままでずっとそうなのだが、やたら毛が多い。ちょっと抱っこしたり撫でたりしたくらいで、手に山ほどつくほど、毛がある&抜ける。
毛が抜けてるのなら次第に皮膚が見えてきてもおかしくないのに、いくらブラッシングしても、羊でいえば毛刈りしたくらいの大量の毛が出るのに、毛刈りの
羊のような肌丸出しの姿に一向にならない。いや、ならなくてもいいのだが、ブラッシングをたとえ100回しても、収穫量は変わらない。
無尽蔵に生えてきてるのか? 彼が頭をすりつけた服や、彼が乗ったベッドカバーなどはすぐコロコロしなければならないし、数日留守にしていれば、部屋にいくつものタンブルウィード(西部劇とかによく出てくる、風で転がる草の塊)が舞っている。
だからモコモコのベッドは1日で毛だらけになるし、ある程度は、はたいたりコロコロできれいにするが、数週間で、もう買い換えたほうが楽、という結果になる。
ずいぶん歳を取ってから、ただのブラシでなく、「ファーミネーター」という強力な毛取りを買って愛用してるのだが、これもマーロウには敵ではなかった。
巷では犬でも猫でも毛がごっそり取れて便利と評判だが、確かに毛がごっそり取れるのだが、マーロウの場合、何度やってもごっそり取れる。
特異体質なのだろうか。もう、21歳にもなって病院に確かめに行くこともないが、つまり私はこの面倒臭さと21年つきあい続けたことになる。自分を褒めてあげたい。
掃除も昔はクイックルワイパーで散乱する毛をくっつけるようにして回収していたが、いまではルンバという、もはや猫(しかも脱毛王)がいる部屋には必須
のメカのおかげで、ずいぶん楽になった。しかし、ルンバもすぐにローラーなどに毛が絡みまくるので、毎日ひっくり返して除去しなければならない。
ルンバとペットはよく、YouTubeなどでも動画を見かける。ルンバを怖がって逃げてしまう猫。ルンバの上に平然と乗って移動する猫。どちらも可愛い。見ていてほっこりする。
ちなみに、もう想像できているかもしれないが、マーロウの場合は「無視」だった。寝ている彼はルンバがぶつかってきても、どきもせず、ただ鬱陶しそうに睨んでいる。
marlowe age 10











*このページは、個人的にお伝えした方のみがご覧になっています。もし検索などで偶然見つけた方は、読んでいただくのはまったくかまいませんが(ぜひ、読んでください)、他の方に伝えないでいただけると、ひじょうに嬉しいです。
*松久淳の、2018年6月に書き上げた、飼い猫マーロウについてのエッセイです。
*全23話。各ページに写真がありますが(デジカメ以前でまったくないページもあります)、話の内容と関係なく、話数=マーロウの年齢の写真になっています。
*各話の目次、エッセイ、写真、ご説明の順に載っています。あえてノーデザインのベタ打ちにしています。読みづらかったらすいません。
*出版、ウェブ関係、その他の方で本稿にご興味あるかたはご一報ください。