松久淳オフィシャルサイト週松(自前)表紙 > トップ > 週松プレイバック > アモーレブラザーズ
*週松創刊当初(2000年7月)からのオリジナル連載「アモーレブラザーズの俺的」。やりにげ3兄弟の朗らかなエロ話は局地的に好評で、図に乗った3兄弟はやがて、2004年に「ラブコメ」で小説デビュー、さらには週松を再構成して、2005年から漫画誌の読み物連載まで(アモーレ3兄弟として)1年もやったりなんかしちゃったのでした。 |
2011年7月27日再公開 週松初出2000年7月〜/漫画サンデー誌2005年1月〜連載 ●1 行為中のNGワードって何? 弟たち、新年早々元気にアモーレしてますか。さて、初回の挨拶もなしにいきなり本題に入るんだけど、二人は行為中のNGワードは何かな? 兄さんの場合、「エッチ」という言葉は♪まるでダメなのさ〜(小沢健二風に)。「エッチしようよ」って言われても……まあするけど、やっぱり自分からは言えないね。「セックス」という行為に合わないんだな。 大嫌いなのは、女性が自分のモノを「クリちゃん」と表現することだね。これも「エッチ」と同様、まったく重みがない。「ねえ、クリちゃん舐めて」なんて言われても……まあ舐めるけど、自分からは「クリちゃん舐めさせて」とは言わないね。そればっかりは無言でゴー!さ。 あと、女性が積極的に愛撫をしようとしたり、淫らな言葉を発することにはいささかの異論もない兄さんだけど、「ナメナメ」というのもノーサンキューさ。 要は兄さんは「行為をする恥ずかしさを紛らわすための幼児語」が嫌いなんだね。「ねえ、私にもナメナメさせて」なんて言われても……まあお言葉に甘えるけど、やっぱりどこかで「しゃぶらせて」とか、それがダメならせめて「キスさせて」と言ってほしいと思っちゃってるのさ。 次男と三男はどうだい? 兄さんどういうこと? 俺たちのやりにげ文通が世の中に公表されちゃうってこと? まずいなあ、最近彼女と微妙なんだよね。え、文字数ないの? じゃあ本題にすぐ入れちゃおうか、うん。 言葉ね……俺は気にしないかなぁ。「エッチ」も「クリちゃん」も「ナメナメ」も許容範囲だよ。ぜーんぜん冷めないし、萎えない。はいはい、って感じで聞いてあげるよ、俺は、全部。むしろ、へぇー、そんな言い方するんだ、とか、面白いなぁ、そのフレーズ、ぐらい思ってる。 問題なのは言葉じゃなくて、口臭でしょ! ニラの匂いを2回連続させてた女とは二度と会わなかったよ……あ、話が違った? 長男兄さんも次男兄さんも、連載開始の挨拶も謹賀新年も前戯もなくいきなり本題かい。 うーむ、俺的には女でフェラチオのことを「おフェラ」って言う女は萎えるね。おフェラはないでしょうおフェラは。ちなみに俺は「口でやって」って言うけど、兄貴たちはどう言うの? 「尺八やって」これはないな。 俺もやっぱ「エッチ」はダメだな。あと「しよう」ってもの。「今日、しようよ!」 おまえは東京ラブストーリーかだよね。言うならズバッと、ハッキリ言って欲しいね。 「セックスしたいの私」でも「今日、無茶苦茶にしてくれる?」でも。 そんな感じかな。 ●2 いい女の断り方って何? 寒くてちんぽも縮こまっちゃうね。兄さんのギャラクティカマグナムもずっとワルサーP38くらいで、なかなか性欲まで手が回らないよ。冬と歳にはかなわないってところかな。 ところで、百戦錬磨の弟たちもたまには女性に断られるときがあるだろう? そのとき、どんな風に言われたら納得するのかな。 兄さんは「あなたの彼女に悪いから」って言う女性は絞め殺したくなるんだ。この台詞、明らかに「私の方が彼女より魅力的なのね」な匂いがするだろう。オマエなんかただやれそうだから……あ、ごめんごめん。柄にもなく取り乱しちゃったよ。 さて、兄さんは昔、ときどき会ってはB止まりだった女性に、「あなたとしてもいいかなあって思うときって、なぜかいつも生理なのよね」と笑いまじりに言われたことがあるんだけど、この断り方はエクセレントだと思いました。いい女は断り方も気が利いてるものだけど、弟たちはどうかな? はー、兄貴の質問はいっつも俺のハートをえぐってくよね……。ほら、俺って3兄弟でいちばんナイーブじゃん。風俗行ってもすぐ萎えるし。 時々あるのが「今日は勝負パンツじゃないから」ってそんなこと気にしなくていいんだよ、そんなこと気になるんなら先にトイレで脱いできてくれればいいだけの話なんだから。ね。 いい想い出……、あ、前にオリンピックやった地で出会った、オーストラリア人のヘレンはナイスだったね、 だって最初にデートした日は翌朝早くから仕事だったからってこう言ったもん。 「たっぷりしたいから、今日はなし」(英語)。 そもそも自分本位なセックスをモットーとする俺としては、俺の誘いを“断る”こと自体いい女の条件ではないね。ぶぁっはっはっは。 しかし、次男兄貴のヘレンはいいねぇ。どうせなら「その後のたっぷりした」話も聞きたかったなぁ。 今度よろしく哀愁。 しかし、さすがのオレも“百戦錬磨”であっても“百戦百勝”ではないのね。どんな断り方をされても納得はしないが、敗北は多いにある。そうあれは……。 相手はとあるお金持ちの一人娘。隅々まで高級感が漂い、とくに冬でも夏でも携帯してる手袋が魅力的だった! その手袋を外した白く細い指に触れ、優しく口説き始めたオレに、彼女は非情な一言を! 「あなたがもっとお金持ちだったらね」 オーマイガッ! シンプル・イズ・ベスト!! ごもっともー!!! 脱帽!!!! 「おとこは金よー!!!」という叫びが、力石のクロスカウンターのようにオレのテンプルを直撃した! 兄貴たち、やっぱ男は金か? あと「して、どうなるの?」…… うーん、答えに窮しますな。 ●3 女はやっぱり「金」なの? (前回の続き)兄貴たち、やっぱ男は金か? あと「して、どうなるの?」…… うーん、答えに窮しますな。兄貴たち答え教えて。 さすがの「夜のやんちゃ坊主」こと三男も「金」には勝てなかったんだね。 これはいつか兄さんも聞こうと思ってたことなんだ。兄さんはセックスのために高級レストランを予約したり、薔薇の花束をプレゼントしたり、夜景がきれいな副都心のスイートを取ったり、なんてことを一度もしたことがないんだよ。 次男なんかはそんなことばっかりしてそうだけど、どうかな? さて兄さんの意見は、それでもやりたかったら死ぬ気で金持ちになれ、だ。 なんだか北方謙三先生みたいな結論だけだけど、それしかないと思うよ。錯覚でもそんな風に思えたらそれはそれで素敵なことだと思うな。 あと「して、どうなるの?」って聞かれたときだけど、そもそもそんなことを言う女とはやらなくていい。そういう台詞を吐く女の95%は不感症に違いないからだ(長男独自調査)。 それでもしたいときは、そうだな、「どうにもならないからするんだよ」って言ってみてはどうかな。実際、そういう女とは一回やったからって、どうもならなからね。 たぶん次男はまったく違うことを言うと思うけど、どちらが正しいというわけではない。三男は三男で自分の道を見つけてくれることを祈ってるよ。 三男坊よ……、セックスの前には国籍も年齢も階級もない、って、もしかしたらそうじゃないかもしれないけれど信じていこうって俺は思ってる。ただ、ふと考えてみると、無意識のうちに計算してることってない? 俺たちの生きるこの資本主義社会では、たぶん経済原理って奴がどこにいても勝手に働きやがって、この女とやるためにはこれぐらいは投資、投資って。 美しい女をそれなりの店でもてなしたり、バラの花を捧げて「でも、君の方がきれいじゃん」て笑ってみたり、映画も指定席買っちゃったりするのも、愛であり、礼儀であったりもするんじゃないかな。 だってキレイな女って、メイクにも服にもエステとかにもがんばってる訳じゃん。 おまえマジかよって女には、送っていくのも指定席もなし。 俺たちの人生という限られた時間の中で、どれぐらい気持ちよくさせてくれるんだこの女は、っていう経済原理。兄貴もよく言うじゃん、ブサイクとのセックスより美女とのお茶、って。 なんか、今週は俺、熱く語ってるね、まいったなぁ……。 で、そうなると男は金を掴まなきゃいけなくなるわけで、自分で稼ぐか、貢がせるか。 俺と兄貴には無理だが、弟よ、おまえならその自慢の息子で、その金持ち女に貢がせてくれよ。 ●4 忘れられない情事ってない? 兄弟、「情事」って言葉にはノーマルなセックスとは違う甘美な響きがあるよね。俺っちのそんな「情事」体験を今回は聞いてくれよ。 今はとある一流企業の重役の奥様という地位にいらっしゃるらしいんだけど、学生時代の俺の家庭教師先のお母さん。当時で40ちょいの部長夫人だったんだけど、キリッとした感じのマダムなわけ。 息子の生活態度の相談に乗っているうちに、俺の息子に乗ってもらうことになったわけ。下着なんてディオールとかなんたらとかの絹のブランドものしかつけないの。一夏だけ、ホントに一夏だけ、俺の体を愛おしんでくれたっす。 えっ、どうやって終わったかって? それは秋風が吹き始めた9月、奥様がセックスの、こいーセックスのあとに言ったさ。 「主人、早稲田の空手部の主将だったのよ」 察しのいい俺っちはすべてを了解し、家庭教師は続けたけれどネバーセックスだったね。うん。 なんか「情事」って感じだろ。兄弟たちはどう? 大学を卒業して初めての夏、休みを使って秋田の友人を訪ねた時のこと。飲み屋のハシゴして、3軒目だったっけ、切れ長の目の色白の女と目があって、妙にその子が気になって。で、ボギーよろしく、目線で「出よう」って合図して先に外に出たのよ。そしたらなんとその女も出てきちゃったわけよ。 「あー、なんて素敵なシチュエーション!!!」 その後はもう野獣よ野獣、二人とも。言葉を交わしてないのが妙に俺達を盛り上げたのね。もう、「逃亡者が明日にも捕まるかも知れないから、今日はしっかりやっとかなきゃ」的にやった。 そして果てたね。いやー、果てた、果てた、ハテナ? 息子が果てたら、頭はすっきり。名前は? 歳は? 電話番号は? 頭の中には疑問符だらけ。でも、聞けないのよ。だってその時の俺ってボギーだから。 「じゃあ」 か細い声で交わした唯一の言葉。その声が頭ん中で増幅され、彼女のあえぎ声を蘇らすのよ。 「ああ、もういっぺんやりてぇ」(本音) まあ、基本は「他人の女」でしょ、情事って。 ある夜、「今から行くよ」と電話して部屋へ行くと、なにやらその女の子がとても慌てているんだ。兄さんの電話の直後に、酔っ払った彼氏から同じように「今から行く」って電話があったらしい。 「ごめん、今日は帰って」と可愛く頼む彼女に、兄さんは優しく頷いた。頷いたそばから彼女の体を180度ターン、玄関のトビラに手をつかせて立ったまま後ろから……さ。事がすんで玄関にへたりこむ彼女は言ったね。 「今日、もう彼となんかできない」 まあその後、駅に向かって裏道を猛ダッシュだったけど。 ●5 3Pってどうするの? アモーレのためなら女も泣かす弟たちよ、というか次男よ、今日は兄さん(と三男)の悩みを聞いてくれるかい。 次男があちこちでアモってるとき、円山町の蕎麦屋で兄さんは三男とよくこんな討議をしてるんだ。 「いつになったら3P、できるかな……」 デリケートブラザーズの異名も取る俺たち、意外に大胆な行為はできないんだよね。 女子には勃ちチンも萎えチンも、男子にも萎えチンも見せてもかまわないわけだけど、「勃ちチンで必死な顏をしてるとき、男同士で向かい合えるか?」(3Pの基本姿勢)が重いテーマとして、のしかかってくるんだよ。 え、情熱派エクスタシーアモーレの次男にとって3Pは「女2人に俺1人」? うん、それはそれで楽しそうだよね。AVだとよく社長(なんの?)が朝、、二人の女秘書(なんの?)に、「社長、おはようございます。こちらもお元気ですか」なんてシチュエーションで、いろんなことしてるよね。 でも、観るのは楽しいけどじゃあ自分がやるとどうかっていうと、実際やれるかどうかはともかく、正直体力の問題もあって、想像しただけでいっぱいいっぱいだよ。忙しそうじゃん、それ。 というわけで次男、今日は兄貴と弟を救うと思って、小粋なアドバイスを頼むよ。ほら、三男もちゃんと次男にお願いして。 そもそもさぁ、「3P」の「P」って何? って真剣に悩んでいたあのころを思い出すよねぇー。あ、度胸出して聞くけど「person」の「P」だよね? オレも未知の領域なんだけど、長男兄さんが言ってるのは「男二人・女一人」のドリカム編成のことだよね。あ、旧ドリカムね。 オレはね、「3P」といえば逆・旧ドリカム編成をいつも想像しちゃうんだよね。 ほら、オレってハーレミスト(ハーレムを好む男性の意/アモーレ辞典より)じゃん。サービス精神旺盛じゃん。でもね、同時に先天性心配症候群のオレは、一人二役プレイを想像するだけで、目が回って萎え萎えになるのね。 ねぇ次男兄さん、どうすればいいのかぁ。 3Pね。じゃあまず男2女1からいこうか。 若いころは、他の男が舐めた部分をそのまま舐めるときに、「これってあの男と間接キス?」とかちょびっと悲しい気持ちになって、元気な息子が心持ち柔らかくなったりしたもんです。 でも、30歳を越え、「フリスクを舐めれば消毒」なんておっぱいパブで思える今じゃ、なんの問題もなし。 そうだなあ、アドバイスとしては、3P前は匂いの強いものは食べずに、歯を磨いてから。そして、 「もう一人の男は見ない」 大丈夫、30歳越えたらもう気にならないって。 あ、男1女2は王様気分、勝ち組だよ。 |