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「愛の教訓」

松久淳/著 小学館/刊 定価1,000円(税別) 2004年3月15日発売

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 愛の教訓とはその名のとおり、ありがたい教えを(勝手に)学び取ろうという趣旨。

 誰もが知ってるあのラブコメ、でも「誰でも知ってる+ラブコメ」ということで、なんだか軽い扱い。はたしてそうなの? 本当はまっとうな観客ならわかるまっとうな色恋の教訓があるんでは?

 だって「ベストフレンズウェディング」を見れば「俺とおまえは友達だからいまさらセックスなんてできないよな」なんて若者の常套句が嘘だってわかるし、「マディソン郡の橋」を見れば不貞時に「体」を求めるのか「心」を求めるのかで大違い、しかも後者のほうがタチが悪いということがわかるじゃありませんか。わかりませんかああそうですか。

 まあそれはさておき。さておくんですか。まあ含蓄はあるけどボケ倒すラブコメ先生と、納得しながらも呆れてる弟子の会話、担当いわく「二人組みの新人お笑いコンビにこのままやってもらいたい」な読物です。面白いです。

 

●本書の目次&カラーイラスト全点公開。(本書ではモノクロ掲載です)  all illustrations by Tamaki Inomata

はじめに

第1話 男女の友情を考える前に「ベスト・フレンズ・ウェディング」
第2話 10人1回ずつか1人10回かの「失楽園」
第3話 浮気相手が本気になったら「マディソン郡の橋」
第4話 夫婦の円満な性生活に「アイズ・ワイド・シャット」

第5話 心理学実験映画だった「タイタニック」
第6話 ボーイ・ミーツ・ガール映画の最高峰は「もののけ姫」
第7話 セクハラする前に「ハンニバル」
第8話 「男はつらいよ」はなぜ恋が成就しない?

第9話 出会い系を予見した「ユー・ガット・メール」
第10話 誰も見ないフリをした「初恋のきた道」の行く末
第11話 なぜ女子は「プリティ・ウーマン」に熱狂したのか?
第12話 ヒュー・グラントの阿部寛化とジョン・キューザックの時代

第13話 「カリオストロの城」と「ローマの休日」は同じ話
第14話 「スパイダーマン」が最後に彼女の告白を断る理由
第15話 ニューシネマの傑作が描き出す「友と妻」問題
第16話 「アメリ」が絶対的に正しい理由

第17話 パトリス・ルコントはなぜつまらなくなったのか?
第18話 「海辺の家」に見る息子とムスコの関係
第19話 「メメント」「インソムニア」で知る中年三大病
第20話 「天国の口 終りの楽園」に学ぶ3Pの過程

第21話 親戚のありがたさを語る「猟奇的な彼女」
第22話 「ラストサムライ」に見るSM的人間関係
第23話 「夫が監督、嫁が主演」が理にかなってる本当の理由
第24話 すべての映画は子供の教育のために

補講/集中ラブコメ講義
おまけ 「天国の本屋」はあの名作シリーズと同じだった?

 

●刊行記念インタビュー。

 たとえば<男女の友情はセックス抜きに成立しない>(ベスト・フレンズ・ウエディング)、あるいは<浮気は病気、不倫は勘違い>(マディソン郡の橋)。

 ーー松久淳の最新刊『愛の教訓』は、本来甘〜いはずの恋愛映画から、すっぱい恋愛の「本音」をズバリ言いあてる痛快な本だ。

 著者は『天国の本屋』シリーズなど多数の恋愛小説で知られる人物。現在もストレートど真ん中のラブコメを執筆中という。さぞや恋愛通!? まさに恋愛御意見番にぴったり! と、たまたま関わっている雑誌で『失恋特集』を組むのにかこつけ、早速インタビューをお願いした。

 ……なんだけど、いわゆる恋愛系の特集っぽいぬるい発言を恋愛小説家のオブラートに包み、なんて芸当を期待したこちらがバカでした。実際は雑誌に書けない発言ばかり。とはいえ、かなりズバリな「ご教訓」を死蔵品にするのももったいないので、刊行記念に一部ご紹介します。

(週松読者のみなさんには余計なお世話でしょうが、『愛の教訓』を書いてる「松久淳」と、『天国の本屋』の「松久淳+田中渉」の「松久淳」はまったくの別モノですからご注意を。「ほとんど本人」(本人・談)は単独ネームのほうで、週松も今回のインタビューも当然こちらのノリ。ロマンチックな世界を壊されたくなかったら著作表示は要チェックですよ!)

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 で、「別れ」に関して恋愛小説家としてのご意見をいただきたいんですが。

「っていうかさ、忘れるよね。昔の彼女なんて名前すら覚えてないよ。ほら、よくあるじゃない。同窓会であった『山田』とか名前とか忘れてて、呼び方のトーンとかさ。山ちゃんだったか『ヤマダぁ』だったか、とかさ」

 一応、恋愛特集なんで、いきなり野郎と彼女を同列にされちゃうと……。もう少しスウィートな恋愛指南をしていただきたいんですが。

「っていうかさ、恋はおっさんはやっちゃいけないからね。歳とるとさ、若いときに感じてたせつなさなんて感じられなくなるし」

 教訓にも出てきた『失楽園』みたいな……。

「あれは経験不足な奴らが暴走しちゃったわけだから、教訓は<浮気はセックスに慣れてから>。実際、おっさん、おばさんの恋なんて醜いからやっちゃダメよ。考えてもみなよ。あれが役所広司と黒木瞳じゃなくて、同じ会社の部長とお局OLだったらどうかって。もうねえ、つきあってても、ヤっててもいいけど、『俺に教えないで!』ってお願いしたくなるから」

 たしかに。それ、コメントとしては使えないけどものすごくわかります。

「『妻が恋しちゃいけないんですか』ってあたりまえだよ。不貞だとかそんな理由じゃなくて、おばさんの恋愛は傍目に醜いだけだもの」

 恋愛って年齢制限があるんですか。

「あたりまえじゃん。醜悪なものは条例で全面禁止してほしいね。それこそ『ラ・ブーム』か岩井俊二の映画以外では見たくないよ、恋愛なんて」

 岩井俊二はともかく、『ラ・ブーム』って……。

「それとさ、雑誌の恋愛特集とかがしっくりこないのは、セックス抜きに語られるとこなんだよね」

 ってそんな、いきなり恋愛特集全体を斬るなんて、さすが最近は女性誌にひっぱりだこの恋愛御意見番ですね。で、やはり愛を確かめるのにセックスは欠かせないとか?

「ちがうちがう。相手の顔や名前とか忘れるけど、忘れないのは体だもん。そのときの感情なんか忘れててもさ、具合がよかったら覚えてるもんだからさ」

 はあ。一応、「失恋特集」っぽい答えに持ってっていただいたわけですね。でも、「具合」は使えません。

「さっき同じことをアンアン編集部の友達にも言われたけどね」

 でしょうね。

「つまりさ恋愛感情のあーだこーだはどーでもいいことなんだよ。所詮忘れちゃうんだからやっぱり」

 所詮と言われても……。

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 あれれ、恋愛の「感情」そのものを「忘れちゃうからどーでもいー」ってばっさり切っちゃったよこの人。一応、恋愛特集なのに。とはいえ、さすが優秀な編集者の顔も持つお方。「結論からいうとさー」とバッチリ使えるコメントは押さえるとこ押さえていただきました(使えたコメントはダヴィンチ3月6日売号に載ってます)。

 「モテない男だけど、モテないチームの中では頑張ってヤった自信がある。すごいレベル低いけど」(本人・談)からこそ、今、恋愛を語れる男、語る資格のある男、松久淳。新刊『愛の教訓』には、リアルな恋愛の神髄満載です。自分で作っといていうのもなんですが、みなさん、恋愛特集でぬるいため息つく前に、『愛の教訓』読んでシビアに勉強したほうがいいですよ。

(荒井理恵/ダヴィンチ誌インタビューを改稿)

 

教訓はすべて帯に書いてあります